田中動物病院ブログ VET'S NOTE

【症例紹介】パテラ

2018年09月16日 カテゴリ:田中動物病院ブログ

パテラとは?

パテラとは膝蓋骨の事をいいます。 要は膝のお皿の骨です。

獣医の言うパテラとは膝蓋骨脱臼の事を意味する事が多いです。

すなわち膝のお皿が本来なら溝にハマっているのですが、複合的な原因により内側ないしは外側に(稀に上向きに)脱臼した状態を指します。

この疾患はあらゆる犬種、猫種で発生する事が知られており、 当院のような品川区にある病院においては小型犬で診る事が多く、

特にトイ犬種における発生率が非常に高い疾患であり、最もよく診る整形外科疾患です。

小型犬においては内側に外れる『内方脱臼』、大型犬においては外側に外れる『外方脱臼』が比率的に高くなっております。

 

 

原因

原因は先天性後天性に分類され、先天性では胎児期から幼少期に発症し、後天性では外傷性がほとんどです。

 

 

症状

症状としては、脱臼に伴う痛みが生まれるため、キャンと鳴いて脚を挙げてしまう(挙上)、

そこまではいかないが体重を支える事が出来ずびっこをひいてしまう(跛行)、

重度の場合には運動機能を失い歩行困難などいずれにしても歩き方が正常とは異なる(歩様異常)といった症状がみられます。

 

 

診断

診断は触診及びレントゲン検査によって、その疾患の有無・重症度分類を決定します。

また、当院においては詳細な状態を知りたい場合では関節エコー検査を行う事もあります。

 

 

グレード分類

.普段脱臼はせず、触診時に手で外す事が出来る

.膝の屈伸によって脱臼する

.常に脱臼しており、手によって戻す事が出来る

.常に脱臼しており、手によって戻す事が出来ない

 

 

治療(保存療法)

教科書的には、グレードⅡ以上は早期に手術を行う事を推奨されていますが、

最初は一時的な鎮痛薬の使用・サプリメントの長期的な摂取といった保存療法・リハビリテーションを当院では試しております。

当院で取り扱っているサプリメントは、米国獣医整形外科の父・Brian Beale先生が開発に携わっている関節炎サプリメントと

私の大学時代の恩師である日本大学獣医外科学研究室の枝村一弥先生の推奨されている関節保護サプリメントになります。

この2つのコンビネーションは当院でも多くの飼い主様に支持されており、

私の飼っているヨーキーもこの2つのサプリメントとリハビリテーションで立ち上がりの良さが向上し、

歩様もかなり良くなったと実感しております。

グレードⅢやⅣにおいては、長期的に力学的な負荷が後肢にかかっている事が多いため、

太ももの骨(大腿骨)の変形やすねの骨(脛骨)が内側に回ってしまう(内旋)などが見られ、

最悪の場合合併症として前十字靭帯断裂も併発している事が多いです。

保存療法に反応が見られなかった場合は、手術する事をお勧めさせていただいております。

 

 

治療(手術)

単一の術式では治らない事が多く、様々な術式の組み合わせによって行います。

①大腿骨滑車溝形成術

膝蓋骨のハマるはずの溝が先天的に形成不全な事が多いため、溝を掘って作ってあげます。

 

②内側広筋・縫工筋リリース

内方脱臼の場合では、長期的な負荷に伴い内ももの筋肉が硬く縮んでいるため、切り離して正常な位置に膝蓋骨が戻るようにします。

 

③脛骨粗面転移術

すねの骨のトップ(最も尖ったところ)が内側に内旋しているため正面を向く様にします。

 

④ラテラルスーチャー法

前十字靭帯断裂例や断裂しそうな症例で人工靭帯を用いて前十字靭帯のサポートをさせます。

 

 

 

症例紹介

前置きは長くなりましたが、先日手術した症例を報告したいと思います。

この子は生まれながらにして、後肢の運動機能を失い、前足だけで歩いていた子になります。

とても良い飼い主様に保護犬として拾われました。

今では、たびたび当院のトリミングの際にインスタグラムでも登場する子です。

触診における診断は先天性両側膝蓋骨内方脱臼グレードⅣでした。

 

img_5256.jpg

 

レントゲン検査所見です。赤が膝蓋骨、青が脛骨粗面、黄が脱臼及び内旋を示しております。

Rが右足、Lが左足です。大腿骨の変形もひどいです。

 

 

飼い主様にも信頼して頂き、手術の承諾を得て手術に踏み切る運びとなりました。

手術の難易度はとても高くかなり苦労した事をしばしば思い起こします。

手術後のレントゲン検査所見です。 膝蓋骨は形成した滑車溝にハマり、脱臼の心配は無さそうです。

脛骨粗面も正面を向いております。

 

手術後の歩様の様子です。歩ける喜びを味あわせてあげる事が出来て良かったです。

とても、幸せそう。

 

歩様動画を見たい人はこちらをクリック

 

 

以上の治療法でキチンと歩けるようになった時は、とてつもなく嬉しく感じます。

当院では、整形外科にも力を注いでますので、是非ともご相談くださいね。

 

 

 

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